パワーエレクトロニクスの基本回路
一般社団法人電気学会「パワーエレクトロニクスシミュレーションのための標準モデル開発協同研究委員会」作成
協力:サイバネットシステム㈱
- 方形波電圧とLCR回路
- コンバータ
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整流回路
3-1 単相半波整流回路(純抵抗)
3-2 単相半波整流回路(誘導性負荷)
3-3 単相全波整流回路(純抵抗・誘導性負荷)
3-4 単相全波整流回路(容量負荷)
3-5 三相全波整流回路(純抵抗・誘導負荷)
3-6 三相全波整流回路(容量負荷)※準備中 -
インバータ
4-1 単相電圧形ハーフブリッジ方形波インバータ
4-2 単相電圧形フルブリッジ方形波インバータ
4-3 単相電圧形フルブリッジ方形波インバータ(位相シフト)
4-4 三相電圧形方形波インバータ(180度通電方式)
4-5 三相電圧形方形波インバータ(120度通電方式)
4-6 単相電圧形ハーフブリッジ正弦波PWMインバータ
4-7 単相電圧形正弦波PWMインバータ(バイポーラ変調)
4-8 単相電圧形正弦波PWMインバータ(ユニポーラ変調)
4-9 三相電圧形正弦波PWMインバータ
1.方形波電圧とLCR回路
1-1 方形波電圧とRL回路
RL回路において入力電圧が急変した場合に,リアクトルと抵抗の時定数による,回路の電流とLの両端電圧の振る舞いを把握することは,パワーエレクトロニクス回路の出力における電圧と電流の波形理解に重要なポイントとなる。
1-3 方形波電圧とLCR回路
先の1-1と1-2の例の応用モデルとして,出力抵抗RにコンデンサCが並列にリアクトルLが直列に接続される回路において,高周波で変化するパルス入力電圧に対して,出力抵抗の両端電圧と電流の変化,リアクトルの両端電圧の振る舞いを把握する。
2.コンバータ
2-1 降圧形コンバータ
降圧形チョッパ,バックコンバータとも呼ばれ,入力電圧より小さな出力電圧が得られる回路であり,入力電圧Edをスイッチング素子にて切り刻む(チョッパ)ことで,出力電圧Eoは方形波となり,その平均値は入力電圧より小さくなる。
2-2 昇圧形コンバータ
昇圧形チョッパ,ブーストコンバータとも呼ばれ,入力電圧より大きな出力電圧が得られる回路であり,スイッチング素子をオンすることで入力電圧Edがリアクトルに充電され,オフ時には入力電圧とリアクトルの放電エネルギーが加算された方形波の出力電圧Eoとなり,その平均値は入力電圧より大きくなる。
2-3 昇降圧コンバータ
昇降圧形チョッパ,バックブーストコンバータとも呼ばれ,入力電圧Edより大きな出力電圧Eoや小さな出力電圧が得られる回路であり,スイッチング素子Sをオンすることで入力電圧Edがリアクトルに充電され,オフ時にはリアクトルの放電エネルギーのみが負荷に放電され,デューティー比Dにより, で降圧, で昇圧となり,出力電圧の平均値Eoは自在に変更可能となる。ここで,出力電圧が負になることに注意が必要となる。
3.整流回路
3-1 単相半波整流回路(純抵抗)
入力単相交流を1つのダイオードで整流して直流を得る回路であり,負荷として純抵抗を接続している。入力電圧が正の半サイクルのときのみダイオードがオンし,正の電圧が出力される。
3-2 単相半波整流回路(誘導性負荷)
単相交流を1つのダイオードで整流して直流を得る回路であり,負荷としてリアクトルと純抵抗を接続している。入力電圧が正になるとダイオードがオンし,誘導性負荷であるため電流が遅れ,入力電圧が負となってもダイオードはオンのままであり,電流がゼロになるとダイオードがオフする。
3-3 単相全波整流回路(純抵抗・誘導性負荷)
単相ダイオードブリッジ整流器とも呼ばれ,4つのダイオードで入力単相交流を整流して直流を得る回路であり,入力の極性により4つのダイオードのオン・オフが決まり,入力の全波形を利用する。
3-4 単相全波整流回路(容量負荷)
この回路は負荷である抵抗に並列に十分に大きなキャパシタを接続した,キャパシタインプット形整流器とも呼ばれる回路であり,入力の極性と大きさにより4つのダイオードのオン・オフが決まり,入力の全波形を利用し,キャパシタにより出力電圧の脈動が平滑化される。
4.インバータ
4-1 単相電圧形ハーフブリッジ方形波インバータ)
この回路は,スイッチング素子とそれと逆並列に接続された循環ダイオードにより構成されるアームを上下に持つレグが1つだけで構成されており,ハーフブリッジ回路と呼ばれる。負荷は2つの直流電源の中性点bとレグの中性点aに接続されており,上下アームのスイッチング素子のオン・オフを切替えることで,合計Edの直流電圧が振幅Ed /2を持つ交流の方形波に変換される。
4-2 単相電圧形フルブリッジ方形波インバータ
先のハーフブリッジ回路のレグをもう一つ接続してフルブリッジ構成とした回路であり,それぞれのレグの中性点に負荷を接続している形状からHブリッジ回路とも呼ばれる。この例では,1つの直流電源が,各スイッチング素子のオン・オフの切替えにより,振幅Edを持つ交流の方形波に変換される。
4-3 単相電圧形フルブリッジ方形波インバータ(位相シフト)
先のフルブリッジ方形波インバータでは,制御周期を変更することで出力方形波の周期(周波数)を変更可能であるが,出力電圧の大きさ(実効値)は変更出来ない。そこで,a相レグのオン・オフ信号に対してb相レグのオン・オフ信号をそれぞれπ-αだけ遅らせる(αだけ重ねる)ことで,出力電圧の実効値を制御することができる。このαを位相シフト量と呼び,この区間だけ各相の出力電圧がゼロとなる。
4-4 三相電圧形方形波インバータ(180度通電方式)
先の単相電圧形フルブリッジ方形波インバータにもう一つレグを加えて3相とした回路であり,各レグの上下アームが180度交互にオン・オフを繰り返し,さらにそれぞれのレグには120度位相差を持たせてオン・オフを切替えることで,振幅Edを持つ3相交流の方形波に変換される。
4-5 三相電圧形方形波インバータ(120度通電方式)
先の三相電圧形方形波インバータ(180度通電方式)では,1つの素子に対して180度の区間でオン信号,残り180度の区間でオフ信号を供給するのに対して,120度通電方式では,回路構成は同じであるが,1つの素子に対して120度区間だけオン信号,残り240度区間でオフ信号を供給する手法であり,全素子に対してオン信号は上アームに1つ,下アームに1つが出力されことになる。
4-6 単相電圧形ハーフブリッジ正弦波PWMインバータ
先の単相電圧形ハーフブリッジ方形波インバータでは,スイッチング信号のオン・オフ周期を変えることで,出力方形波の周波数は変更可能であったが,出力電圧実効値を変化することはできない。同じ回路構成で出力電圧実効値を可変とし,さらに正弦波波形とするためには,正弦波PWM制御を適用する。
4-7 単相電圧形正弦波PWMインバータ(バイポーラ変調)
先の単相電圧形フルブリッジ方形波インバータ(位相シフト)でも電圧の大きさ(実効値)が可変であるが,出力電圧波形を正弦波とするために,同回路に正弦波PWM制御を適用する。また,その出力電圧はデューティー比が変化するパルス波であり,振幅がEdで正と負に振れるバイポーラ極性をもつことから,バイポーラ変調と呼ばれる。
4-8 単相電圧形正弦波PWMインバータ(ユニポーラ変調)
本回路は,先の単相電圧形正弦波PWMインバータ(バイポーラ変調)と同回路にて,正弦波PWM制御を適用した例であるが,出力電圧の半周期において0Vと+Ed V,もしくは0Vと-Ed Vの振幅を持つパルス波が出力され,単極性の出力となることからバイポーラ変調に対してユニポーラ変調と呼ばれる。
4-9 三相電圧形正弦波PWMインバータ
本回路は,先の三相電圧形方形波インバータと同回路にて,正弦波PWM制御を適用した例である。スイッチング信号の作成手順は,単相電圧形正弦波PWMインバータのユニポーラ変調と同様に,各相レグに対して各相電圧指令信号を作成し,搬送波である三角波とそれぞれを比較する。出力電圧である線間電圧(例えばeuv)は最大振幅が直流電源Edのパルス波となる。
